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特許の価値を評価する「YK値」とは?

こんにちは! 工藤一郎国際特許事務所です。日銀、東証、日経グループ、金融機関、大手技術系メーカーと多数の特許価値評価・知財戦略分析に関する取引実績があります。このブログでは特許価値評価や知財戦略分析に関する情報を提供しています。

今回は現在注目の特許の評価指標「YK値」を紹介していきます。

POINT
  • YK値は特許の経済的な価値を評価できる。
  • YK値は日本の全企業、日本の全特許について算出されている。
  • YK値は企業の成長性の予想や、知財戦略の立案に活用できる。
弁理士
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YK値は株価との関連性が確認されているので、企業の成長性を評価できるものとして、資銀行でも活用されているんです。

YK値とは?

YK値とは工藤一郎国際特許事務所が開発した特許を経済的な側面から評価する指標です。

特許の価値を評価する指標は従来からいくつか存在するのですが、そのほとんどが特許取得の手続上の効率性や他特許への影響を測るものにすぎませんでした。
例えば、よく使われる指標に登録率や被引用件数などがあります。登録率は特許出願が登録される割合のことで、特許出願に無駄がないことを示しています。また、被引用件数とは他社から参考にされたり、逆に他社の特許の拒絶理由の引例になった数で、他の特許への影響の大きさを示しています。

弁理士
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登録率や被引用件数は知財戦略の参考にはなるのですが、特許が本当に自社の業績に影響しているのかはわからないんですよね。

これに対して、YK値は特許が実際に市場で発揮した独占排他力を推測して評価できる点が大きな特徴となっています。独占排他力とは、競合企業を排除し市場を独占する力ですから、当然業績に直結するものなのです。
この特徴が評価され、YK値は投資銀行・民間金融機関のほか、日本銀行や東京証券取引所、経済産業省などでも活用実績があるんです。

YK値が必要とされる理由:無形資産の重要性

YK値がどのようなものなのかをご説明する前に、まずはYK値がなぜ必要とされるようになったか、その背景を簡単にお話ししておきたいと思います。

そもそも、企業の価値とはなんでしょうか? これには様々な説明ができるでしょうが、その企業が生み出す将来の収益性や、成長性が現在の価値として評価されている、というのが最も有力な説でしょう。そして上場企業であれば株式市場でその収益性や成長性が株価としてリアルタイムで評価されていますので、いわゆる時価総額=企業価値と考えることが可能なわけですね。
 *時価総額=株価×発行済み株式数。つまりその企業の全株の合計額。

さて、その立場をとりますと、ある一つのことが分かります。帳簿上の資産価値、つまりこれは有形資産の簿価ですが、この金額よりも市場での評価額である「時価総額」(=企業価値)の方がはるかに大きいのです。例えばアマゾンの時価総額は簿価の約7倍、テスラモーターズの時価総額は簿価の約14倍(いずれも2023年4月時点)です。

つまり、現代の企業にとって重要なのは不動産や機械設備などの有形資産よりも、知的財産などの無形資産だということです。必然的に、この無形資産を評価することが、企業にとっても投資家にとっても重要!ということになるのです。

そして無形資産のうち、最も重要なもののひとつである「特許」の経済的価値を評価するのがYK値なのです。

弁理士
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登録率や被引用件数では無形資産としての価値(経済的価値)は評価できないので、それができる指標(=YK値)が必要となるわけですね。

YK値のコンセプト

前述の通り、YK値は特許が実際に市場で発揮した独占排他力を評価しています。
独占排他力とはある製品を市場で独占し、排他する力なので、経済的価値に直結するわけですね。
しかし、そもそも、この独占排他力はどのように評価しているのでしょうか? そんなものを実際に客観的に計測できるのか疑問に思いますよね。
結論から言ってしましますが、YK値では競合他社による特許に対する攻撃(無効審判や異議申立など特許を消滅させるアクション)の強さを評価しています。

…と言ってはみたものの、どうして特許に対する競合他社からの攻撃の強さが、その特許の独占排他力を測ることになるのか、さらなる説明が必要でしょう。
ここで、ちょっと視点を変えてみてください。今、ある有力な特許を持つ企業がA社だとします。その競合企業がB社だとします。あなたはB社の社長の立場になってみてください。

ある有力な製品はA社の特許発明です。その製品は特許権者であるA社が製造・販売を独占できる。つまり競合であるB社(あなたの会社です)には製造・販売ができないわけです。当該製品を取り扱えば儲けが出ることはわかっているのに、指をくわえてみていることしかできないのですから、何とも困ったことです。

弁理士
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B社の社長であるあなたにとっては、A社の特許が事業障害になっているわけですね。

こんな時、あなただったらどうしますか? 「何とかしてその特許をなくすことができないだろうか」「もし、その特許を無効にできる方法があるとしたら、その方法にチャレンジしてみたい」などと思うのではないでしょうか。

*2021年10月1日 経済産業省プレスリリースより

実は特許法にはこのような手続きが存在します。それが無効審判、異議申立と呼ばれる手続きです。

弁理士
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上の写真は無効審判(リモートで口頭審理の場合)の様子です。裁判と似た形式ですね。とても重要な手続きなのです!

競争の激しい業界では、無効審判や異議申立などの手続きはかなり頻繁に行われています。特に製品の収益性が高く、競合他社にとって事業障害の度合いが大きいほど、競合他社はこの無効審判・異議申立にコスト掛けて攻撃をします。言い換えれば、競合他社からの攻撃(=アクション)が多い特許ほど、 「独占排他性」が強く、事業上価値の高い特許であるということになるのです!

そこで、このような特許に対する攻撃アクションのコストを計算すれば、その特許の独占排他性を測定し、その価値を数値化できるのではないか? このコンセプトから生まれた指標がYK値です。なお無効審判・異議申立は権利者が負けると特許が消滅してしまいますが、もちろんYK値は特許権利者が勝った場合のみ採点しています。

YK値の計算方法

具体的なYK値な計算方法について簡単にみておきましょう。
以下は特許が登録し、消滅するまでの手続きをまとめたものです。

上図の上側がYK値の算出対象なるアクションです。公開後の閲覧請求(競合他社が無効審判・異議申立にそなえ情報収集をするアクション)、情報提供(競合他社が特許出願を拒絶すべき理由を特許庁に情報提供するもの)、登録後の無効審判などが挙げられています。また、スペースの都合で省略されていますが、もちろん異議申立ても採点しています。
(*ここでは説明しませんが、YK3値とは、YK値と対になる指標で、権利者自身が特許に費やした費用を評価するものです)

これらのアクションは、特許庁からすべてのデータが公開されています。
YK値の発行元である工藤一郎国際特許事務所は、この特許庁が発行する全データを毎月入手し、分析していますので、YK値はすべての特許について、毎月そのスコアが計算されています。
また、上場企業についてはグループ会社まで含めて名寄せして、全保有特許のYK値を集計しています。したがって、すべての上場企業(日本国内)について、毎月YK値が算出されていることになります。

弁理士
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実際のYK値の算出はさらに複雑で、約200パターンの採点パターンがあります

なお、最終的なYK値の算出には、ここからさらに、出願日からの経過時間に応じた技術陳腐化を考慮した減衰処理をおこないます(つまり、あたらしい特許ほどスコアが高くなる)。この減衰処理は複雑ですのでここでは説明を省略します。

YK値の活用事例

ここまではYK値がどのようなものを見てきましたが、実際に世の中でどの程度活用されているのでしょうか?
特許の価値評価自体がニッチな分野なので、あまり知られていないかもしれませんが、YK値には実はかなりの活用事例があります

以下、その一部をご紹介します。

投資銀行・金融機関・経済紙でのご活用

以下の目的で投資銀行・金融機関で活用されています。

  • 日本株投資のための指標として
  • 顧客への情報提供用資料として

*機密保持のため、取引先名称は伏せています。

公開できる活用事例として以下があります。

大学・知財部・IR部門でのご活用

以下の目的で大学・知財部で活用されています。

  • 出願動向調査
  • 自社と競合他社の特許戦略比較分析(特許MAP)
  • 優良な技術系企業(就職先)の選定

*機密保持のため、取引先名称は伏せています。

また、IR部門での活用例として以下があります。

日経テレコン・YKS STORE

YK値などを利用したコンテンツ「YKS特許力情報」が、「日経テレコン」から利用できます。
また、工藤一郎国際特許事務所「YKS STORE」からも購入できます。
こちらは入門編として非常にリーズナブルな金額(1320円~)でご利用できます
YKS特許力情報には以下の8コンテンツがあります

分類別コンテンツ

  • 特許力業界地図「YKS Map」
  • 特許競争力ランキング
  • 技術開発敵対分類別リスト
  • 技術開発友好分類別リスト

会社別コンテンツ

  • YKS特許力会社情報
  • 高競争力特許・直近出願会社別リスト
  • 技術開発敵対会社別リスト
  • 技術開発友好会社別リスト

PATWARE

オンラインでYK値を利用できる特許価値評価WEBサービス「PATWARE」を提供しています。

PATWAREのご利用はこちらから!

その他

その他にも活用事例が多数あります。こちらからご覧ください。

以上

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